1.私はこれに騙された...競馬必勝法のからくり

 

1.船橋競馬場のコーチ屋

 20年位前、私が競馬をやり始めた頃の話です。草競馬の船橋競馬場に一人で行き、

場内をぶらついていた時のことです。ある男が、にこにこしながら話し掛けてきました。

 「おぅ、久しぶり!鈴木さんは元気か。田中さんは・・・」

この人誰だったかなぁ。いくら考えても、思い出せないのですが、先輩の鈴木さんの友

達なのかと思いながら、話に付き合ってしまいました。そうこうすると、輪ゴムで百枚くら

いは縛ったかに見える的中馬券の束(その頃は、まだマークカードなんてものもなく、馬

券はすべて、200円券、500円券、1000円券でした。)を取り出し、

 「実は、知り合いに厩舎関係の人がいて、いい情報があるんだ。さっきのレースは、こ

れだけ当たった。次のレースも、デキレースだから、○○○を買うといい。」

と、いうのです。まだ、コーチ屋のコの字も知らなかったうぶな私は、すっかり騙され当時

の私にとって、大金の数万円を勝負する羽目になりました。

 そのレースは外れましたが、もし、当たったらどうなっていたでしょう。どこかで、私を見

張っていた男が近づいてきて、いくらかの報酬を要求したのでしょう。こういう人たちが、

草競馬にいることを後で知りました。馬券の束は、1番上のものだけが本物だったのでし

ょう。鈴木さんや田中さんなら、誰でも、知人いますものね。

 

2.新宿ウインズの仙人

 札幌では、あまり見かけませんが、関東ではウインズに行く途中などで予想を売ってい

る人をよく見かけます。

 10年以上前の話になりますが、新宿ウインズの近くに一風変わった予想家がいました。

仙人のような格好をして、いつも多くの人を集めていました。看板には「飛騨高山で修業し、

予知能力を身に付けた。」というようなことが書かれていました。仙人が目隠しをして、相

棒が2つのさいころを振り、その目を当てるというパフォーマンスをいつもやっていました。

それが、必ず当たるのです。

 ある日、見ていたら、私にマンガを渡し、適当なページを開かせ、何ページを開いたのか

当てて見せるというのです。わかるわけないと思いながらやってみると、あら不思議、ピタ

リ的中しました。これはすごいと思い、売っている予想を買いました。その結果は、本命サ

イドの予想が書いてありましたがハズレ。見事に一杯食わされました。

 その時には、仙人がなぜ、さいころの目やマンガのページを当てるのか不思議でしたが、

後日仙人とその相棒とのやり取りを見ているうちに、からくりがわかりました。相棒が何だ

かんだよくしゃべるのですが、その言葉に秘密があったのです。

 もう、おわかりと思いますが、数字を表すキーワードを決めていたのです。例えば「みな

さん揃いになられまして」と言ったら、3・3のぞろ目というように。ページを当てるのは、

客の中にさくらがいて、覗いてわかった数を指で知らせて、それをまた相棒が言葉で伝達

していたようでした。今なら、ハイテク機器を利用して、伝える方法があるのでしょうけど。

 

3.巷にあふれた競馬必勝本

 今となっては、懐かしいのですが、一昔前スポーツ新聞、二流週刊誌は、怪しげな競馬

必勝本の広告でにぎわっていました。○○ーン○○ク、エ○○方式、T○○方式、テン○

○ント方式、ピ○ミッド・○ワー必勝本、その他多くの出目本・・・広告は、たいてい12レー

スあるとしたら、8・9割くらい的中し、高配当はもとより、万馬券的中も当たり前でした。

 私も、騙されて何冊も買いました。(○○ーン○○クなどは、最近まで宣伝が掲載されて

いたのですが、当たった人の写真が10年以上も同じ人でした。)この手の本は、市販され

ている本とは違い、1冊数万円するのです。この値段の高さはいかにも当たるだろうという

心理を与えてしまいます。中には、手帳サイズで、2・30ページしかないものもありました。

もっとも、後のテレフォン予想と同じく、この値段の高さを逆手にとる商法もありました。

 実際この手の本を買って、ひと財産築けるなどということは、ありえません。たいていは、

2・3日使ってみるだけで、本の値段以上の金額を競馬会に寄付してしまうことになるでしょ

う。このテの本のからくりは、いろいろとあるのですが、代表的な手法を紹介します。

 

・大穴印などから5〜6点買うように指示されているが、指定新聞が明記されてい

 ない。

・広告には5点勝負などと書いてありながら、実際は、本命5点・中穴5点・大穴5

 点と言っ
た具合に、実際には15点も買わなければならない。

そして、この方法が最も騙されやすいのですが、実際のレース結果を見て、それ

 に
合わせて本の内容を書き換えて、新たに刷り直したものを販売する。

 

 3つ目の方法は、手帳サイズの印刷経費がかからない出目表などに見られました。これ

だと、少ない点数でも、当たったようにみえるのです。(結果に合わせて本を作ったのだか

ら当たり前)実際、販売している所に行って確かめて買おうとしても(高額配当の当たり馬

券のコピーを見せるところもありました。多分切り貼りしたものだったでしょうけど。)過去の

レースは、ものの見事に当たっているので、騙されてしまうのです。

 

4.テレフォン予想・ダイヤルQ2予想

 ダイヤル Q2が登場する前後、競馬のテレフォン予想が全盛期を迎えていました。必勝

本は当たらないとわかった私が、次にすがったのは、テレフォン予想でした。

 この業界の草分け的存在のウイナーズを始め、ルート66、優駿クラブ、高額予想料のプ

レジデトとソナー、ターゲット、ワールド、美浦クラブ、伊藤友康の1000万円獲得大作戦、

競馬の神様故大川慶次郎のホースマン会議、当時1馬の本誌予想担当の石井進吾のラ

ンダム、塩崎利雄の国際会議、小宮修三のキング・オブ・ホース、高本公夫のコペルニクス

その弟子によるマリン・ホース..・・・

以上は、私が実際に入会したものの一部です。

 有名人の確信レースが売りの会社、科学的予想、馬主情報が売りの会社、サイン読み

の所など多種様々ですが、はっきりといって、年間プラスはおろか、1〜2開催プラスにして

くれた所が、数社あった程度です。

 ダイヤル Q2は、アダルト用に使われ問題になるよりも早くから、この業界では使われて

いました。伝説の馬券師小宮修三氏は、これで足立区に14LDKの御殿を建てたそうです。

ダイヤル Q2に、一度でも、かけたことがある人は十分ご存知でしょうけど、どこも、前置き

や能書きが長く、メインレースの予想1つ聞くにしても10分位かけなければいけないのが

普通です。アダルトものと同じです。結局は、予想料払って普通の回線で聞いた方が安上

がりでした。

 入会金・予想料が高い所(入会金10万円・予想料5万円以上)ほど、当たりそうな気が

しますが、これも、高額必勝本と同じで心理作用をねらったもの。しかしながら、そんな大

金、よほどのお金持ちにしか払えない気がしますが、それには、2重のからくりがあったの

です。

 そういう所は、1度案内書を請求すると、数ヶ月後にキャンペーン中とか言って、

 料金を
大幅に下げて案内書がくるのです、割安感を与えて入会しやすくするの

 です。

 それでも、他の所よりも高かったのですが。(必勝本の中にも同じ手口を使うところがあ

って、無料で100名にプレゼントとかいう広告を出して、今回は残念ながらはずれましたが

特別に3万円の本を5千円でお譲りしますなどと案内をよこすのです。それでも、向こうは

儲かる。)

 また、このほど厩舎関係者からデキレースの情報が手に入りましたとか、連絡をご丁寧

に送ってくる所もありました。もちろん当たりません。

 これも、有名な手口ですが、無料公開と言って、何種類かの予想をグループ別に分けて

流し、その中の1グループでも当たれば客がつくという手口を使うところもありました。

 

5.ナンバーズ予想機に騙されるな

 今、よく見かけるのが、ポケットコンピュータを使った競馬やミニロト・ナンバーズの予想

機。ミニロト20回中12回的中!などどいう文句が踊っていますが、冷静に考えれば、ミ

ニロトやナンバーズがそんなに当たるわけありません。本当にそうなら、すぐに億万長者

なれます。

  この手のからくりも、3の必勝本のからくりと同じ。その時点でわかっている当たり

のデータ
を入れ、指定されている当選番号などを入れた時に、それが何点かの

買い目の中に出てく
るようにしてあるというもの。ですから、広告の的中結果には、

嘘はないのです。(データベースみたいなもです。)

 というわけで、これから先の予想については、まず当たりません。不思議に思っている

とバージョンアップしたので、データの書き換えをお勧めしますなんていう連絡がくる。そ

のこと自体がこのからくりを証明しているようなものですけど、それでまた騙されたら、本

当のバカです。

 


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